ミステリー小説

【2022年版】東野圭吾のおすすめミステリー本15作品をご紹介!

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「東野圭吾さんの本の中で、おすすめのミステリー作品はどれなんだろう?」

東野圭吾さんの作品は、一言でミステリー作品といっても、様々な色をもった作品がとても多いです。
例えば、SF色が強いもの、社会テーマを強く前面に出したもの、人間ドラマにより重点を置いたものといった感じで。

そこでこの記事では、個人的に思う、よりミステリー色が強いと思う作品を選んでみました。
トリックにとにかく驚いた作品や、謎が謎をよんでさらに謎をよんでくるといったものなどなど。

東野圭吾さんの作品は初めてという方は、こちらの「【東野圭吾厳選10作品】初心者におすすめの作品をあらすじ付きでご紹介!」を参考にしてみてくださいね。

それでは、おすすめミステリー本はこちらです!

Contents

容疑者Xの献身


ガリレオシリーズ初の長編作品。
第134回直木賞受賞作で第6回本格ミステリ大賞も受賞。
2005年度の国内の主要ミステリランキング「本格ミステリ・ベスト10」「このミステリーがすごい! 」「週刊文春ミステリベスト10」すべてにおいて1位を獲得。
映画かもされて大ヒットとなりました。
東野圭吾さんの代表作といっても過言ではないでしょう。
僕もこの作品で一気に東野圭吾ワールドにひきこまれました。

あらすじ

天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、2人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者の湯川学が、その謎に挑むことになる。

引用元:amazon

感想

とにかく思いもよらないトリックと大胆さに驚きます。
天才数学者が考えた計画は誰をも驚かす結果となりました。
かばってもらった本当の犯人でさえも。
最初に犯人が分かっていて、その犯行をガリレオ先生がどうやって切り崩し、証明するか?という流れでストーリーは進行していきます。
しかしそのストーリー展開は見事で、どこからどこまでが計画通りなのかわからなくなる場面も。
そして、最後に背後に隠れる本当の真実を知った時は鳥肌ものでした。
天才数学者と天才物理学者の対決がとにかくスリリングで面白いです。
お互いが大学の頃の友人ということもあり、緊迫した駆け引きの中にありながら、時折見せる友情としての触れ合いは心が惹きつけられることでしょう。
衝撃的すぎるトリックとその大胆さに、しばらく余韻から抜けられませんでした。
ボーッと考えを巡らせてる感じです。
そして、石神の大きすぎる愛とその結果に切なくて目がうるみました。
何度も読み返してしまうほどの魅力をもった傑作だと思います。

見どころ

数々の伏線と予想もできない大胆なトリック

緻密に計算され張り巡らされた伏線はもちろんのこと、それらを回収したときに現れる予想だにしない大胆なトリックに驚かされることでしょう。
しかも決してトリック自体は複雑に絡み合ったというわけではありません。
「そんな視点考えもしなかった!」という見事なトリックなのです。

天才数学者・石神の究極の愛のかたち

自殺しようとしていたところを、隣に引っ越してきた花岡親子に救われ、再び生きることを選んだ石神。
その石神の花岡靖子への感謝と純粋な愛は、自分の身を挺してでも彼女を守るという覚悟がありました。
そのために自分の身を捧げてでも完璧な犯罪計画を立て、実行するのです。
うちに秘めたとてつもない大きな愛に胸が詰まりました。

天才VS天才のスリリングな駆け引き

同じ天才であれど、物理学と数学では考え方のアプローチがまったく違うからこそ、対決がより面白くなっていると感じます。
スリリングな駆け引きが続いていく様は、読んでいていとても興奮してしまいました。

 

赤い指


『容疑者Xの献身』で直木賞を受賞後に発表した書き下ろし長編小説です。加賀恭一郎シリーズの7作目。ドラマ化もされました!

あらすじ

少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。いったいどんな悪夢が彼らを狂わせたのか。「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼ら自身の手によって明かされなければならない。」刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味とは?家族のあり方を問う直木賞受賞後第1作。

引用元:文庫本 裏表紙より

感想

構成としては、最初に犯人がわかり、それを加賀恭一郎が鋭い洞察力と推理力で追い詰めていくというストーリー展開です。
そこには加賀刑事の人情味が溢れており、
ただ犯人を追い詰めれば良いという話ではなく、
真実がわかった上で、どういうタイミングでそれを暴いたら良いのか?
と言うところまで考えながら、行動していきます。
家族間の関係や心理が生々しくとてもリアルに描かれており、
それがまた緊迫した状況を盛り上げていて、読みごたえがあります。
良いも悪いもふくめた多くの「人間らしさ」がうまく描写され、散りばめられています。
社会派テーマとして「親の介護」という要素もあり、読みながらも考えさせられる物語だなと思いました。
ラストで明かされる犯人さえも知りえなかった事実に驚くばかり。
そして、その事実を知った時には、家族の愛情というものに強く触れたような気がして、
胸にこみ上げてくるものがありました。
悲しいけれども、じんわりと心に染みわたる、そんな温かい気持ちになれました。

見どころ

家族に隠されていた真実とは?

家族の将来のために、殺人事件を隠蔽しようと画策するうちに、
今まで知りえなかった家族の秘密が明らかになります。
その秘密は読者の気持ちをも揺さぶるものではないかと思います。

巧みな犯人の心理描写

犯人の心理描写がとにかく面白い。
苛立ちや焦りなど、読んでいるこちらがその現場を見ているかのような気持ちになるほどリアルに描かれています。
その巧みさに、気づいたらグイグイ作品の世界に引き込まれていることでしょう。

加賀刑事の鋭い推理や人間力

加賀刑事がどんどんと犯人を追い詰めていく展開は、申し分なくスリリングで面白いです。
しかし、ただ解決するだけでなく、犯人を「人」として見つめる優しさ溢れるアプローチも加賀恭一郎シリーズの醍醐味と言っていいでしょう。
作品の見どころだと思います。
最後の事件の解決の仕方には感動しました。

より詳しい感想はこちら→「赤い指のあらすじと感想!加賀恭一郎シリーズの名作!」

 

ブルータスの心臓


キャッチコピーは、「約束された未来のため、男は殺人へと走る!」
2011年に藤原竜也さん主演でテレビドラマが放送されました。

あらすじ

産業機器メーカーで人工知能ロボットの開発を手がける末永拓也。将来を嘱望される彼は、オーナーの末娘・星子の婿養子候補になるが、恋人・康子の妊娠を知り、困惑する。そんな矢先、星子の腹違いの兄・直樹から、同僚の橋本とともに、共同で康子を殺害する計画を打ち明けられ・・・。大阪→名古屋→東京を結ぶ完全犯罪殺人リレーがスタートした!

引用元:文庫本 裏表紙より

感想

出世のためには殺人をもしてしまう、かなり危ない主人公。
そして、それを取り巻く人たちもひと癖もふた癖もある人物ばかり。
まずはその世界観についていくのが少し大変でした。
しかし、死体リレー計画が実行されると、トラブルが発生。
予定と違うお揃いしい現実がまっていた。
そこから物語は大きく展開し、俄然面白くなってきます。

なぜ死体がすり替わっっていたのか?
しかもその死体は実行犯のメンバーだった。
どういうことなのか?その謎が強烈に作品の世界へ引き込んできます。
早く先を読みたい。知りたい。
そして追えば追うほど、さらに大きな謎にぶちあたる。
そしてまた先へと進んでしまいます。

恐ろしい殺人計画から始まった物語の最後に、
こんなにも切ない結果が待ち受けているとは、予想しませんでした。
ある意味ドラマチックな最後だったのかもしれない。皮肉にも。
アクションドラマを見ているような迫力ある最後でした。

見どころ

死体がすり替わってからの展開にがっつり心掴まれました

男3人が企てたあまりにも自分勝手な殺人計画だが、いざ実行しようとしたらいきなりトラブルが。
運ぶはずの死体がすり替わっていたのだ。
ここから物語は大きく展開していく!

主人公の冷酷でガツガツな感じがすごい

主人公の自己中さや周りを損得でバンバン使い捨てていくという人物像に感情移入はしづらかったものの、その性格と行動力が物語の展開を盛り上げています。
他にもどこか欠落してるような異常な人達が登場してきます。

序章の数ページがどのように繋がってくるのか

無人のロボット工場(管理者として1人だけ人間がいるが)起きた事故。
意味深に始まるこの出だしの事故がメインの事件とどう関わってくるのか?
そう思いながら読んでいくと、犯人を探すヒントになるかもしれません。

より詳しい内容はこちらへ→「ブルータスの心臓 あらすじと感想」




 

回廊亭殺人事件


あらすじ

一代で財を成した一ヶ原高顕(いちがはらたかあき)が死んだ。妻子を持たない高顕の莫大な財産の相続にあたり、彼の遺言状が一族の前で公開されることになった。公開場所は旅館”回廊亭”。一族の他には、菊代という老婆が招待されていた。だが、菊代の真の目的は、半年前に回廊亭で起きた心中事件の真相を探ることだった・・。その夜、第一の殺人が!?斬新な趣向を凝らした傑作長編推理。

引用元:文庫本 裏表紙より

感想

復讐のために犯人を探しながら、殺人を犯していく主人公。
犯人を追う立場と警察から逃げる立場、両方の視点で行動していくストーリー展開となっています。
トリックの凄さだけでなく、人間ドラマの設定がすごいので、作品から放たれるパワーが凄い。
よくある遺産相続にまつわるゴタゴタからの殺人事件かなと思って読んでいくと、最後には結構もっていかれると思います。
やっぱりひねりがあります。

真犯人はやっぱり予想外でした。
なんでそうなったのかというと、巧みにミスリードされていたのです。
ミスリードされているかも?と思うことすらなかったのです。
些細な、でもとても上手な表現を使って。

復讐の発端となった火災事故の真相がわかった時の急展開には驚き。
最後に見せる犯人の人間性がもうやばすぎて、切ない気持ちでいっぱいになりました。
主人公の気持ちを考えると、やるせないというか。
ただ、作品全体としての満足感はとても高かったです。
東野圭吾さんらしい深い人間ドラマが作品に重厚感を与えていてすごいなと思いました。

見どころ

火災事故の真実とは?

火災の被害にあった主人公目線で物語は展開していくのですが、なぜこんなことになったのか?を一緒に探っていくと楽しいです。

復讐する犯人を探しながら殺人を犯していくというスリリングな展開

自分を殺そうとした犯人へ復讐するために変装して遺産相続の場へ潜り込む主人公。
真犯人を探しながらも、周りから気づかれないように行動していく緊迫感にヒヤヒヤします。

思い込みを使った読者へのトリック

最後の真犯人登場の場面では、おもわず混乱しました。
少し自分の頭を整理するためにフリーズしました。それくらい意外でした。

 

沈黙のパレード


人気のガリレオシリーズ第九作として、書き下ろされた長編作品です。

あらすじ

容疑者は彼女を愛した普通の人々。悲しき復讐者の渾身のトリックが、湯川、草薙、内海薫の前に立ちはだかる。
突然行方不明になった町の人気娘・佐藤が数年後に遺体となって発見された。
容疑者はかつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。さらにその男が、堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を「憎悪と義憤」の空気が覆う。
かつて、佐藤が街中を熱狂させた秋祭りの季節がやってきた。
パレード当日、復讐劇はいかにして逃げられたか。殺害方法は?アリバイトリックは?
超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める。

引用元:amazon

感想

登場人物が多く、それぞれの視点や心情が描かれながらストーリーが展開していきます。
特定の犯人が1人いて、それを解決すれば良いという簡単な事件ではありません。
登場人物達の誰がどこまで絡んでいるのかを推理しながら、ガリレオ先生や刑事たちとともに読み進めていく感じです。
とにかく複雑に絡み合っているわけですが、犯行動機もまたそれぞれ複雑に絡み合っています。
その絡み合ったものの先にある真実を知った時には、何とも言えない驚きが待っていました。
最後の怒涛の展開には目が回り、いわゆるどんでん返しがこれでもかとやってくるので、興奮しっぱなしでした。

見どころ

たくさんの登場人物とたくさんの視点

事件を追う三人(湯川・草薙・内海)の他に、街の人たちの視点から感情の動きとともに展開されていきます。
そしてそれらが事件を複雑にしています。
真実を追い求める者たちVS犯人達のチーム戦。
全容が紐解かれていくときの爽快感はすごいです。
解決したかのようにみせて、更なる展開が続いていくところも「さすが!」の一言です。

街の人たち自ら建てる犯行計画

街の祭りの裏で行われた犯行計画。
街の人達が、まるでイベントごとのように、役割を決めて、
意見を言い合い、アイデアを出し合っている姿はとても奇妙でした。
その雰囲気・異様なテンションは読んでいて、違和感がありつつも目が離せませんでした。

事件の本当の意味での解決は?

事件について街の人たちは固く口を閉ざします。
抱えている秘密はそれぞれ違うものの、最後にどうやなれば街の人達は納得して終われるのか。
区切りが付けられるのか。
ただ真実が解明されるだけでなく、その解き明かされ方にも注目です。

 

悪意


あらすじ

人気作家・日高邦彦が仕事現場で殺された。第一発見者は、妻の理恵と被害者の幼なじみである野々口修。犯行現場に赴いた刑事・加賀恭一郎の推理、逮捕された犯人が決して語らない動機とは。人はなぜ、人を殺すのか。超一流のフー&ホワイダニットによってミステリの本質を深く掘り下げた東野文学の最高峰。

引用元:文庫本 裏表紙より

感想

「犯人」ではなく「動機」を推理していくミステリー作品です。
犯人は序盤にすでに分かるのですが、その動機が分からない。
なぜ、殺人事件を起こしたのか?そこに重きを置かれている物語です。
「犯人の手記」と「加賀刑事」2つの視点から追いかけていくという構成になっています。犯人による手記によって少しづつ犯行動機が語られていき、それに対して加賀刑事の考察が追っかけていく。
真の犯行動機がわかった時は、複雑な気持ちになりました。
加賀刑事の真相に迫るスピード感とその推理力・洞察力にひたすら魅了されました。
すごい。

そして、殺された日高の言動や行動を知るたびに、腹が立ってきます。
人間としてありえない感じ。
恨まれて殺されてしまってもおかしくはないだろうと納得してしまう。

ただ、終盤になってくると、その考えや思いに「?」が浮上してきて、困惑しました。
最後にはとにかく、犯人・野々口にしてやられた!といった感想です。
伏線とか注意しながら読んでいましたが、そもそも・・・ね。
っていうトリックにひっくり返されました。
爽快感を感じるくらいに。

見どころ

本当の犯行動機は一体何だったのか?

加賀刑事の見事な推理により、犯人は犯行動機を含めて手記を書きます。
読者はこの手記を読んで犯行動機を知っていくわけですが、
そこがこの作品の大きなポイントなのです。
どこまで本当なの?と。

日高と野々口の関係性

こちらも上記と同じように手記で語られていくのですが、その人間関係は学生時代からの闇が関係していました。
そうやって自分の中で2人の関係性を整理していくと・・・。

加賀刑事の見事な推理

犯人を追い詰める加賀刑事の緊迫感や、鋭い洞察力からの推理展開はやはり読んでいてとても面白いです!

より詳しい内容はこちらへ→「悪意のあらすじと感想!」




 

 

聖女の救済


ガリレオシリーズ第5弾で、ガリレオシリーズ2作目の長編作品。ドラマ化もされました。

あらすじ

資産家の男が自宅で毒殺された。毒物の混入方法は不明、男から一方的に離婚を切り出されていた妻には鉄壁のアリバイがあった。難航する捜査のさなか、草薙刑事が美貌の妻に惹かれていることを察した内海刑事は、独断でガリレオこと湯川学に協力を依頼するが・・・。
驚愕のトリックで世界を揺るがせた、東野ミステリー屈指の傑作!

引用元:文庫本 裏表紙より

感想

一言でいうと、悲しくて切ない物語。
読みごたえは抜群で、作品から感じる様々な人の愛と苦悩にとても心を揺さぶられます。
草薙刑事が容疑者である美人妻に惹かれながらも捜査をおこなう姿からは、いろんな葛藤を見ることができ切ない気持ちで読み進めていました。
湯川がたてた大胆なトリックの仮説を知ったときは、思わず「やっぱりガリレオ先生はすごい!」と心でうなっていました。
トリックに関して、驚くとともにその仕掛け考えること、実行することがすごいと思いました。
完全犯罪と思われた時、その証拠として出てきたものは、皮肉にも「愛」がゆえの偶然。
何気なく目を通していた「パッチーワーク」の意味も最後の方で鍵になっていたことを知ったときは、鳥肌ものでした。
読後感はとても大きな人間ドラマにただ余韻に浸っていました。
ミステリとしてのトリックの面白さはもちろんですが、それを実行するための恐るべき意思の強さと愛ゆえの執念に心を持っていかれる作品だと思います。

見どころ

犯罪の動機

なぜ夫は殺されたのか?刑事たちが推理する動機は二転三転。
本当の動機がなかなか見えてこない。
そして、真の動機がもっと深いところにあり、それを知った時の切なさは心打ちます。

あまりにも大きなスケールの犯行計画

世の中によくある単純な動機ではないがゆえに、
普通では考えられない、
そして実行できたら完全犯罪となってしまうほどの大胆で緻密な犯行計画。
タイトルの意味にも繋がってきます。

ガリレオ先生の推理展開

今回はとにかく犯行を暴くのに苦戦します。
真相に辿りつくために次々と考えていく様はやはり読んでいてとても楽しい。
そして、先生が出した1つの答えは、「虚数解」と言えるような犯行でした。
理論的には考えられるが、現実的にはありえない。
果たして、ガリレオ先生が導き出した答えとは?

 

麒麟の翼


加賀恭一郎シリーズ、9作目の作品です。映画化もされた人気作品です。

あらすじ

「私たち、お父さんのこと何も知らない。」
胸を刺された男性が日本橋の上で息絶えていた。瀕死の状態でそこまで移動した理由を探る加賀恭一郎は、被害者が「七福神巡り」をしていたことを突き止める。家族はその目的に心当たりがない。だが刑事の一言で、ある人物の心に変化が生まれる。父の命がけの決意とは。

引用元:文庫本 裏表紙より

感想

切ない。考えさせられる。
でもしみじみとした気持ちで読み終えました。
読了感はしっかりあります。
最後の急展開は意外で、犯人も少し予想とは違う人でした。
中学の事件が突然でてきたので、「え?」とは思ったものの、
次々と出てくる疑問(謎)を追いかけていくと本当の動機が見えてくるという、
ある意味王道なストーリー展開なのかもしれません。
ただ、そこに絡んでくる人間関係は複雑で、また各々の心理描写が本当に見事で、どの立場の人の気持ちにも納得してしまう自分がいました。
全てが悲しい。
事件に関わった人に完全なる悪人がいないことがまた余計に悲しくなる。
父親の気持ちはどんなだったのか。
やっぱり最後は考えさせられます。
本当にこれで良かったのかと。
事件を解き明かす刑事が、加賀と松宮で良かったと思いました。
警察が考えるストーリーで事件に幕がおりそうだったところを、
二人の刑事は「全然なにも解決しない」と動き回るところは胸打つものがありました。

見どころ

殺人が起きるまでの背景と絡み合ったストーリー展開

今回の事件は、たくさんの人達の思いや出来事が絡み合いながら、ドミノを倒すように起きてしまった。
はたして事件の全貌はどうなっていたのか?

殺された父親はなぜ人形町に通っていたのか?

青柳さんがなぜこの街に通っていたかを突き止めなければ、あの家族にとって事件は終わらない。  文庫本 P139

この言葉通り、単純な殺人事件ではありません。
父親の行動の謎が解き明かされた時、まさに親子のバトンが繋がるのです。


 

より詳しri

より詳しい内容はこちらへ→「麒麟の翼のあらすじと感想!見どころもご紹介!」

 

宿命


1990年に発表された、今までとは少し違った趣向で書かれた作品。ドラマ化もされています。

あらすじ

高校時代の初恋の女性と心ならずとも別れなければならなかった男は、苦悩の青春をすごした後、警察官となった。男の前に10年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの2人が宿命の対決を果たすとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。

引用元:文庫本 裏表紙より

感想

刑事と容疑者の2人の関係が、学生の時のライバルであったという繋がり。
その2人の間にあるものは何なのか?
作品自体は、非常に内容の濃い、完成された作品だと思いました。
ミステリー要素に加えて、各々の人間ドラマも丁寧に描かれており、それが物語に大きな深みを加えてくれています。
真相を追ううちに判明してくる研究所の内容には驚きました。
複数の謎を並行して追いかけているうちに、それらが徐々に繋がっていくところは、やはり醍醐味でしょう。
単純に面白い。
ふとした疑問からスケールの大きな話まで見事に絡み合ってきます。
最終章で怒涛のように押し寄せる真実にただただ驚きました。
犯行の真相に関してもスッキリするのではないが、それがまた切なさ悲しさを引き立たせる。
ライバルの男の抱えていた宿命は想像以上に重いものでした。
そしてそれは真実を知った主人公にも。
題名の「宿命」の意味が深く心に染みていった。
殺人事件だけでなく、それさえも一つの壮大なドラマの一つと思えるような、人間ドラマたっぷりのストーリーで、満腹感がたまらなかったです。
ありきたりな表現になってしまうけれども、本当にラスト一行に持っていかれました。この一行で少し微笑ましい気持ちにもなりました。

見どころ

ライバルの男が抱える秘密とは?

ライバルの男はなぜ今の状況を選んできたのか?
その理由と事件の関係性は一体何なのか?

「糸」とは?

ライバルの男の妻・美沙子がずっと感じている見えない糸の正体は何なのか?
その真相を知ると、彼女に対する何とも言えない切ない気持ちが湧いてきます。

「宿命」とは?

主人公とライバルの男との関係は何なのか?
まさに「宿命」と呼ばざるを得ない真実が待っています。




 

レイクサイド


主人公の内面や登場人物の内面が一切描かれていないという実験的な作品になっています。

あらすじ

妻は言った。「あたしが殺したのよ。」
ー湖畔の別荘には、夫の愛人の死体が横たわっていた。四組の親子が参加する中学受験の勉強合宿で起きた事件。親たちは子供を守るため自らの手で犯行を隠蔽しようとする。が、事件の周囲には不自然な影が。真相はどこ?
そして事件は思わぬ方向に動き出す。

引用元:裏表紙より

感想

読了後は、とても悲しくも、少し温かい気持ちになりました。
犯人が誰で動機はなんだったのか?
トリックは何だったのか?
という単純な物語ではありません。
殺人を犯してしまった、それをどう対処しようか?
とみんなで犯罪計画を企てるというお話。
いかに殺人がバレないようにするか?
その過程で湧き上がる周囲への不信感や疑惑の真実は?
といったところを解明していきます。
それがとても面白いのです。
主人公が隠蔽仲間たちの異様な雰囲気に飲みこまれながらも一緒に実行していく。
でも、何かが違う。おかしい。
そう思いながらその「異様なもの」が何なのか?を追いかけていく。
刑事がでてきて云々ではなく、
まだ殺人事件が表に出ていない状態での仲間内の心理的な掛け合いがうまく描写されていて、
とてもスリリングで面白かったです。
もちろん最後に明かされる謎の真実には驚かされるばかりです。

見どころ

殺人事件を隠蔽しようとする人達が何かおかしい

妻が殺人事件を犯してしまい、自首をしようとする主人公だが、それを隠蔽しようと同じ現場にいた人達から提案されます。
なぜそこまでするのか?不審に思いながらも物事は進んでいく。この人たちは本当は一体何を考えているのか?

妻が隠している秘密は一体何なのか?

妻の様子がどうもおかしい。
周りの人たちとの関係性は何なのか?何を隠しているのか?事件隠蔽が進むにつれて、その秘密が明らかになると、衝撃の事実が判明します。

主人公が最後に決断した行動とは?

自首をすすめた主人公も結局隠蔽計画に手を貸すことに。
しかし、それでも様々な疑惑と葛藤が常に頭をよぎります。
そして、最後に主人公が決めた決断はいったいどういったものだったのか?考えさせられる最後です。

 

放課後


江戸川乱歩賞受賞作品です。

あらすじ

校内の更衣室で生徒指導の教師が青酸中毒で死んでいた。先生を2人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女・剣道部の主将、先生をナンパするアーチェリー部の主将。犯人候補は続々登場する。そして、運動会の仮装行列で第二の殺人が・・・。

引用元:文庫本 裏表紙より

感想

犯人や殺害の動機の意外性に驚いた。
トリックがわかってすっきり!というよりは、
ふわっと形のない繊細なものたちが積み上げられて悲劇がおこってしまった。
そんな印象でした。

ストーリーが分厚い。
たくさんの伏線や並列しておこっている物語が一気に収束するときの緊迫感はすごかったです。

密室トリックが登場するのですが、それ自体が物語に大きなトリックを仕掛けているという初めての面白さでした。

最後の方で、事件の全貌が見えてくるたびに、
主人公が辛くなっているのを見て、真相が知りたいと思いつつも、
どんな可哀想な悲劇的な最後なのだろうかと、自然と想像もしてしまっていました。

体育祭の準備や盛り上がりの部分に関しては、
単純に「こんな風に盛り上がってたな」と自分が学生の時の文化祭を思い出し、
胸が少し踊りました(笑)

犯人に車で襲われるシーンはとても迫力と臨場感があり、思わず息を飲みました。

見どころ

学生たちの繊細な心理を描いた描写

学生ならではの純粋な気持ちや行動が繊細に描かれていて、心をうちます。

伏線がたくさん仕掛けられていて、物語が分厚い

まずいきなり主人公が襲われるというところから始まり、物語の中にはたくさんの伏線が登場します。
そしてそれらが交錯したり繋がったりした時のわくわく感はすごいです。

想像できなかった犯行動機

誰が犯行をおこなったか?
と同じくらい、
なぜ犯行をおこなったのか?
という動機は物語の重要な部分です。
その動機が大人が普通に抱くような動機とはまた違ったところに焦点があたっており、そこがまた見どころになっています。

より詳しい内容はこちらへ→「放課後のあらすじと感想!」

 

 

むかし僕が死んだ家


あらすじ

「あたしには幼い頃の思い出が全然ないの」。7年前に別れた恋人・沙也加の記憶を取り戻すため、私は彼女と「幻の家」を訪れた。それは、めったに人が来ることのない山の中にひっそりと立つ異国調の白い小さな家だった。そこで2人を待ち受ける恐るべき真実とは・・。

引用元:文庫本 裏表紙より

感想

主人公(一人称視点)で進んでいくので混乱することなくスラスラと読んでいける。
別荘で登場人物は二人のみ。
舞台で演じられているような作品。
家が不気味で怖い。
何か出てくるわけではないのですが、心理的にホラー感満載、「でも知りたい」の連続です。

とにかく伏線の連続がすごすぎる!

最後の真実に驚くとともに、切なく哀しくなりました。
その時のさやかの気持ちを考えると胸がいたかった。
父の謎を追っかけるうちに、隠したかった秘密を知ってしまう。
小学生より前の記憶がないのもこんなことがあったのかと。

自分がもしこうやって同じように真実を追い求めて、知らない方がよかった事実、もしくは知った方がよかった事実(それ自体もよくわからないが)を知ってしまったらどうやってその後生きていくのだろうか。
そう考えさせられました。

真実は悲劇だったけれども、謎はきれいすっきり解明されたので、モヤモヤはありませんでした。
鮮やかなトリックで気分爽快!というよりは、切ないミステリーを読んだ感じです。

家の中に元住人の日記が置かれているのですが、そこに書かれていた伏線達の怒涛の回収場面はみどころです。
ハラハラドキドキします。

謎が謎をよぶ、典型的なストーリー展開ですが、
その答えが一つ一つ予想外の角度から飛んでくるので、
そのたびに「え?」ってなります。

本を読んだ後に改めて題名の意味を考えると、納得。

見どころ

父の謎の行動、なぜ沙也加は記憶がないのか?

彼女の幼少期の記憶がないのは一体なぜなのか?
亡くなった父が持っていた鍵と地図は何なのか?
主人公と一緒にその謎を追いかけていきます。

現れた謎の家は一体何なのか?

ミステリー屋敷の探索みたいで楽しい。
誰かが住んでいたということはわかるようだが、家族はいったいどこに行ったのか?
すべての時計が同時刻をさしている意味は何なのか?
屋敷で見つけた少年の日記が重要な鍵を握っている。
とにかく伏線の宝庫。
どう解釈して読み進めていくべきなのか?
最後に明かされる日記に書かれていた本当の意味は?

演劇舞台のような設定

登場人物は、基本的に主人公と元恋人の沙也加の2人だけです。
そして舞台となるのが「幻の家」=古びた洋館なのです。
その中にある手掛かりをもとに謎を追っていきます。
限られた状況下なのに、ストーリー展開は見事の一言です。




夢幻花


第26回柴田錬三郎賞受賞のヒューマンミステリー作品です。
「こんなにたくさんの時間をかけた作品はない」と東野圭吾さんは語られています。

あらすじ

一人暮らしの老人が殺された。第一発見者の孫娘・梨乃は、庭から消えた黄色い花の鉢植えが気にかかり、大学院生の蒼太と真相解明に乗り出す。宿命を背負った者たちの人間ドラマが交錯する、衝撃のミステリ。

引用元:文庫本 裏表紙より

感想

殺された祖父が育てていた「黄色い朝顔」を手がかりに、犯人を突き止めようとする主人公。そして偶然に出会った青年と共に、事件の真相と「夢幻花」の真実を解き明かしていきます。
この「夢幻花」の存在によってたくさんの人物が思惑を抱いて謎の行動を起こしている。
なぜなのか?
祖父を殺した犯人は一体誰なのか?
現在だけでなく、過去にも横断して真相をつきとめて行く過程はとてもワクワクします。

深い人間ドラマとそれらの交錯に、満足感たっぷりの読み応えがでした。
登場人物たちのそれぞれの人間ドラマが面白く、
なおかつ全体を結びつける大きな真相には驚かされました。
描かれていた人間模様にしみじみとした気分にもなりました。

切ないけれど、最後はどこか暖かい気持ちに。
一皮向けて前向きに進んでいこうとする主人公二人の姿が輝いて見えました。

見どころ

黄色い朝顔の謎

江戸時代には存在していたという黄色い朝顔だが、今は現存していない幻の花とされている。
この黄色い朝顔をめぐってその周りでは事件や事故が発生する。
不吉な花だ。
この黄色い朝顔は一体何なのか?

犯人は誰でその動機とは?

なぜおじいさんは殺されてしまったのか?
「黄色い朝顔」の謎をといていくと、おじいさんの殺人事件の真相も明らかになってきます。

蒼太の初恋相手の存在

子供の頃の初恋相手に、偶然の再会を果たす蒼太。
しかし、昔と同じようにまた、彼女は彼の前から姿を消してしまう。
果たして彼女の目的は一体何なのだろうか?

複雑に絡み合った関係

いろんなところに散らばっている一見関係なさそうなものたちが、「黄色い朝顔」を中心に、全部つながっていく過程はとても面白いです。

より詳しい内容はこちらへ→「夢幻花のあらすじと感想!」

 

十字屋敷のピエロ


あらすじ

ぼくはピエロの人形だ。人形だから動けない。しゃべることもできない。殺人者は安心して僕の前で凶行を繰り返す。もし、そのぼくが読者のあなたにだけ、目撃したことを語れるならば・・・しかもどんでん返しがあって真犯人がいる。前代未聞の仕掛けで推理読者に挑戦する気鋭の乱歩賞作家の新感覚ミステリー。

引用元:文庫本 裏表紙より

感想

とにかくピエロの視点という構成が入っているのが面白い。
普通のミステリー小説ではなかなかできない、嘘のない事実だけをしることができます。

ピエロは嘘をつく必要がなく、ただただ見たものを語るだけだからです。
だからこそ、そこに潜んでいた隠れたトリックにまんまとひっかかりました(笑)

ピエロの視点から最後の最後に語られる真実は、まさにどんでん返し。
そして少し恐怖すら覚えました。

人物関係が最初は少しわかりづらかったですが、
読み進めていくうちに無理なく理解できてました。
(わかりづらかった理由も読んだ後に考えると理由がわかるのですが。)

ピエロを作った人形師の存在がまた絶妙で、
刑事でもなく関係者でもない第三者として事件の真相に迫る推理を見せてくれるのです。
その推理展開には驚かされました。

そして、美容師が捕まってからのストーリー展開には興奮させられました。
読み終わった直後は、しばらくは最後の真実を頭が理解するのを眺めている感じでした。
ざわつきます。
たくさんの人の想いが重なって、筋書き通りには行かなかった犯行。
人間の欲と愛、憎しみが入り混じり、集取がつかない広がりを見せていた、
そんな作品だと思いました。終わる寸前までは。
油断してたところに、強烈な一撃をもらってしまいました。

見どころ

ピエロの視点が面白い

ピエロの視点が構成上とても重要なものになっており、そこをヒントにしながら、実際の登場人物たちの言動や行動とともに推理していくというのは、新鮮で面白かったです。

物語の終わりが見えないストーリー展開に胸が躍る

早々に犯人が捕まったと思いきや、そこからさらに大きくストーリーが展開していくので、好奇心を刺激されっぱなしでした。

最後に登場するピエロが見たもの

意味を理解するのに、すこし間が必要ですが、よくよく考えてわかった時は鳥肌ものです。あらためて再読したくなります。

 

 

ある閉ざされた雪の山荘で


本作品は、仮想のクローズドサークルという異色の設定が使われていることで話題となった作品です。
クローズドサークルとは、何らかの事情で外界との連絡や行き来が断たれた状況下でおこる事件を扱った作品のことです。

あらすじ

早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか?驚愕の終幕が読者を待っている!

引用元:文庫本 裏表紙

感想

不思議なミステリーだなと思った。
感動というか、誰が悪いのかもわからない。
気分が乗っていく前に、みんな泣いて終わってしまったという感じ。
ある意味本当に見事な舞台だった。
小説を読んでいる感じではなく、舞台を見ていたのだ。
そう思った。

トリックというか、犯人が行っていたことが何なのかを知ったときにゾッとしました。
素直に怖いと。
普通のミステリーでは味わえない読後感だと思います。

爽快感、驚き、やられた!という感じではありませんでした。
ふわー、モヤモヤ〜 涙のラストにみんな感激してるんだろうなぁ。みたいな。
何か客観的な目で見ている自分がいました。

まさに客席から舞台を眺めているような。
これも東野圭吾さんの狙いなのか。
だとしたら、本当にすごい。

すごく印象に残る作品でした。

見どころ

芝居なのか?本当の事件なのか?

大きな叙述トリック(作者が読者に対して仕掛ける記述場のトリック)が仕掛けられています。
あっちかとおもったら、こっちで。
そしたらまたあっち。
とにかく振り回されます。
どこまで芝居で、どこまでが本当なのか。
本当に混乱します(笑)

設定からおもしろい

「山荘に閉じ込められた男女に殺人の恐怖がふりかかる」
という設定で書かれているのではなく、
それを「演じる」という設定でスタートすることで、
こんなにも視点が変わって面白いとは思わなかったです。

結末がまた予想外

誰がしかけた今回の事件?でどうやって実行したのか?何のために?
謎を追っていったら最後に知る真実は、別の角度から降ってくるイメージでした。

 

最後に

「【2020年版】東野圭吾のおすすめミステリー本15作品をご紹介!」と題して、おすすめの本を選ばせていただきました。

東野圭吾さんの作品はミステリー作品を根底に、あっと驚くものや、切ないもの、考えさせられるもの、笑えるものまで様々です。

いろんな東野圭吾ワールド作品を手に取るきっかけになれば嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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