ミステリー小説

ブルータスの心臓(東野圭吾)の感想とあらすじ!

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今回は東野圭吾さんの『ブルータスの心臓』をご紹介したいと思います。

この作品は、犯罪者の視点でスタートしていくのですが、途中から犯罪者でもあり、被害者の視点にもなっていくという、面白い構成の作品となっています。

東野圭吾さん自身が勤められていた会社時代の知識(ロボット)も盛り込まれているのも興味惹かれるところです。

この作品の魅力を、あらすじや感想とともにお伝えしたいと思います!
(核心部分のネタバレは避けています)

あらすじ

大阪・名古屋・東京を繋ぐ完全犯罪殺人リレー計画

末永拓也は産業機器メーカーとしては中堅のMM重工に勤めていた。今は9年目となる。
所属は研究開発2課で、現在の担当は人工知能ロボットの開発と応用を担当。
最近では会社の上司にも一目置かれる存在だ。

「人間が皆平等だなんてことは幻想にすぎない。」というのは彼の昔からの考えだった。
この世は不公平と差別に満ちている。
誰でも生まれたその瞬間から、様々な階層に分けられているのだと思っている。

環境に恵まれなかった拓也は、支配者にまわるためにも手段を選ばず、ひたすらに社会的に出世を目指していた。

その為に、彼はある人物とのパイプをつくろうとしていた。
MM重工創設者一族の専務・仁科敏樹だ。
彼が力を入れているのがロボット事業部であり、完全ロボット化の工場であった。

拓也は、役員室の美女・雨宮康子に目をつける。
そして部内一番のエリートの力で、見事に彼女に巧みに近づき、専務・敏樹の情報を流してもらう約束をとりつけるるのだった。

仁科敏樹の次女・星子がアメリカから帰国することに。
拓也は、星子の婿になることを考え始める。

仁科邸で恒例の新年会に参加し、そこで婿の座を奪うべく突き進む。
幸い、仁科専務は、エリートととして力を見せている拓也推しのようだ。
新年会の後、星子とゴルフにいくなど、着実に関係を重ねていくのだった。

ある日、康子から「子供ができた」と知らされる拓也。
今は仁科星子の婿となるべく関係を気づいている拓也にとって、康子との関係がばれるのは大変まずい。
子供なんて、なおさらだ。
なんとかせねばと、考えあぐねる拓也。

すると、仁科直樹からお呼びがかかる。
彼は、仁科敏樹の息子であり、星子の兄である人物だ。
ロボット事業部の開発企画室室長でもある。

直樹のもとへ訪れると、そこにはもう一人いた。
それは、同じ会社の橋本敦士だった。

そして、直樹から驚きの事実を知らされる。
それは、「今この場にいる3人そろって康子と関係をもっている」ことだった。
康子との関係がばれるのは、各々都合が悪い。
そして、康子を殺す計画をたてはじめるのだった。

警察は今までの経験から、必ず単独犯か二人の共犯かを考えると予想する仁科直樹。
そこをつこうという考えだった。
3人共犯による、「死体のバトンリレー」だ。
大阪、名古屋、厚木、東京を結ぶ。

ABCの役割を決めることに。
Aが康子を殺し、Bが中継し、Cが康子の死体処理をする。

トランプを利用したくじ引きの結果、直樹が殺す役に。
Bは拓也、そしてCは橋本が行うことになった。

 

計画の破綻

当日、出張という名目で拓也は名古屋へ向かった。
直樹はしっかりとアリバイを作ったのちに、計画通り遺体をのせた車へ乗り込んだ。
そして、橋本との受け渡し予定の厚木へ向かわせた。

橋本と合流した拓也は、橋本とともに驚きの事実を目撃してしまう。
なんと、毛布に包まれていた遺体は、康子ではなく、仁科直樹だったのだ。

2人はどうすることもできず、そのまま遺体を直樹のマンションへ運ぶ方向へ変更する。
殺人計画に賛成の意を表明する連判状を回収しようとするも、見当たらない。
そして、橋本は直樹を乗せた車をマンションへ走らせるのだった。

 

康子が生きていた

そして、翌日、遺体が警察に発見される。
警視庁捜査一課の佐山刑事登場。
遺体は二台の車に挟まれるように置かれていた。

部屋からABCと書かれた紙が発見される。
(燃やしかけだった)
ABC殺人事件か・・と佐山刑事はつぶやくのだった。

大阪にいったはずの直樹の遺体が東京で発見されるという異質な事件。
MM重工へ捜査に向かった佐山刑事は、聞き込みから、末永拓也の存在を知る。

直樹が死んで、康子が生きている。
わけがわからない拓也。

橋本の話によると、あのあと部屋に入って連判状を探したが見つからなかったようだ。
おそらく犯人が持ち去ったのではないか?と。
康子は自分が殺されることをわかっていたのでは?
康子でなかったら犯人は誰?
なぜ計画を知っていた?
次から次へと疑問がわいてくるのだった。

 

第二の事件

当日有給休暇をとって大阪に行っていた康子を拓也は怪しむ。
橋本へ康子を殺すことを話す。覚悟を決めろと。

ある日、橋本のもとへ小包が届いた。
差出人はMM重工の仁科専務となっていた。
中には、万年筆と青いインクが入っている。

直樹の葬儀の香典返しだと思った橋本は中身をあけてしまう。
今の気持ちを書き綴り、拓也へおくろうと手紙をかきはじめるのだった。

そして後日、自宅で、机に座ったまま死んでいるところを発見される。

 

加速する拓也の行動

自殺かと思われた橋本だったが、捜査の結果、青酸ガスによる死亡だということがわかった。
送られてきた万年筆に細工がほどこされていたのだ。

そして、その万年筆は実は拓也にも送られていた。
たまたま興味がなく放置をしていたおかげで助かったのだ。
しかし、犯人は確実に自分を殺そうとしていることを感じる拓也。

星子の話によると、直樹はトランプマジックが得意だったらしい。
ならば、直樹はAの役をひかないようにできたはず。
何か隠していたことがあるに違いないと拓也思い始め、彼のことを調べ始める。

拓也は康子を引き続き消すことを考えていた。康子が犯人であろうがなかろうが、どちらにしても彼にとっては存在が邪魔だったからだ。

拓也は送られてきた万年筆に仕込まれていた青酸カリを利用することを思いつく。
そして、こっそり合鍵を作っていた拓也は、急須にその青酸カリをしこませて、康子を殺害することに成功する。

 

ギャンブル

康子の遺体が発見され、警察は彼女が妊娠していることを知る。そして、捜査の結果、康子自身も誰の子供なのかを知らなかったのでは?と推測。
康子はその妊娠をきっかけに、「ギャンブルにでる」と友人に話していたらしい。

玉の輿しか結婚はありえないという考えだったという康子は、妊娠という事実をもって、父親にせまる予定だったことがのちに分かる。

 

「D」の存在

捜査が進んでいく中、直樹のマンションで発見された燃えかすの紙の分析が終わる。
MM重工にもその結果は伝えられ、社員に伝えられる。

そこには、「ABC」という文字と、「屋」と「子」、そして「D」の文字が発見できたという。
(ABCは役割、「屋」は名古屋の「屋」、「子」は康子の「子」だという推測が入る)

しかし、「D」とは一体なんなのか?
ABCが役割だとすると「D」の役割である謎の人物が存在することになる。
それはいったい誰なのか?

再び、拓也は調べ始めるのだった。

事件の真犯人とはいったい誰なのか?その動機とは?
最後の最後まで気が抜けない怒涛の展開が始まる。

 

「ブルータスの心臓」の感想

次々から次へと気になる怒涛の展開は、圧巻でした。
まず、「大阪、名古屋、東京を繋ぐ完全犯罪殺人リレー」というコピーからしてグッと心惹かれます。

そして、物語が始まると早々に、この計画がいきなり崩れるという展開。
もう、心を掴まれっぱなしでした。

自分が主人公・拓也だった場合に、同じことが起きたらどうするだろうか?
と想像するのも面白かったですね。
目の前にいきなり予定と違う遺体が登場。
しかもそれは、計画を持ちかけてきた主犯だったわけですから。

拓也はなかなか勝気で傲慢な人物。出世のためならなんでもする。
幼少期から恵まれなかったとはいえ、ここまで考えが極端だと、正直なかなか感情移入することはできませんでした。

しかし、彼の並外れた貪欲さと勝利を掴むための行動力は、確実に作品を大きく盛り立てている要素の一つといえるでしょう。
彼ほどはっきりとした人物でないと、この作品はここまでの魅力とダイナミックさを持たなかったかもしれません。

そして、主人公だけでなく、仁科家の人間たちもまた一癖も二癖もある人間ばかり。
さらに作品を盛り上げています。

仁科敏樹(MM重工専務)が康子と関係を持っていたこと。
そして、他にもたくさんの女性と関係をもっていること。すべては後継ぎのために。
そのことが分かるシーンではすこしゾッとしたものです。
まるで後継ぎを作るためのロボットになっているとさえ思えました。

序章で、ある男性がロボットに殺されてしまうというはじまりが、本筋の殺人リレーとどう関わってくるのか?という点も見ものでした。
どう関わるも何も、実はものすごく本命の出来事だったということが最後に結びついた時は、爽快感のある納得を味わうことができました。

 

最後に

読み終えてみて、本当に楽しい時間を過ごせたと思える、すばらしい作品でした。
最後の最後まで事件の真犯人が見えない展開。そして、劇的なラスト。
ありがとうございました。

 



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