この作品は、東野圭吾さんの作品の中でも有名な加賀恭一郎シリーズです。
構成が少し変わっていて、最初に犯人がわかり逮捕されるのですが、犯行に及んだ動機が分からない、というところから作品の本題がスタートします。
タイトルの『悪意』とはいったいどういうことなのか?
後半で話が二転三転して、見事に翻弄されることでしょう。
そして最後に「動機」を知った時は、またさらに驚くこと間違いなし!
「犯人の手記」と「加賀刑事の記録」という形で、静かに進行していきますが、読めば読むほど目が離せなくなる作品です。
それでは、『悪意』(東野圭吾)のあらすじと感想をお伝えしたいと思います。
(ネタバレ少しだけあり)
あらすじ
人気作家の日高邦彦が自宅で殺された。
第一発見者は、妻・理恵と中学時代からの友人・野々口修。
そして、捜査を担当することになったのが加賀恭一郎刑事だった。
すると、犯行当時の様子を野々口は手記として記録していたことが判明する。
加賀はその手記を見せてもらえないかとお願いし、手記を元に事件の真相解明に乗り出した。
しかし、加賀刑事は必ずしもこの手記が真相を語っているとは限らないと、自分なりに仮説を立てながら検証し、事件の真相に迫っていくことに。
そして、事件当日の野々口が発した言葉によって、「犯人は野々口ではないのか?」と加賀刑事は考えていた。
野々口にはアリバイがあったが、加賀刑事は人並みはずれた洞察力と推理で、そのアリバイトリックを見事に見破るのだった。
しかし、野々口が日高を殺した、肝心の動機がさっぱり分からない。
「なぜ、野々口は日高を殺したのか?」
この謎を解くため、加賀はさらに捜査を進めていくのだった。
野々口は口を閉ざしたまま、その動機を語ることを固く拒否し続ける。
彼は、それを手記として伝えたいと申しでる。
そして、加賀刑事はそれを待つことにしたのだった。
その手記の内容から、日高の元妻・初美と野々口の不倫関係の存在が浮かび上がる。
そして、日高に不倫関係がバレているのではないか?
このままでは、二人はもう会えなくなるのではないか?
と怯えながら考えた結果、二人は共謀して、日高を殺す計画を立てたのだった。
さらにその手記の内容には、「ゴーストライターとしての存在」や「子供の頃のいじめ」などが書かれており、動機は太く長くつながっていく。
日高が野々口の弱みを握っては脅して、意のままに操っていたことがわかる。
しかし最終的に、手記の内容、物的証拠、聞き込みなどによる情報から、加賀は大きな違和感を感じるようになる。
納得がいかない加賀は捜査を続けていく。
そして、ついに真の「犯行動機」につきあたるのだった。
終盤で二転三転する展開に、見事に驚かされる作品となっている。
感想
犯人の手記と加賀刑事の考察が交互に展開されるという構成だからこそ生み出せるどんでん返しがとにかく面白かったです。構成そのものがトリックだったというか・・・。とにかく新しい感覚の面白さでした。
あわせて動機がわからないという展開が、また新鮮で良かったですね。
物語に吸い寄せらて、一体どんな動機なのか?
という気持ちがどんどんと膨らんでいく中、最後はなり予想外の動機。
こんな動機もありえるのか、と驚きでした。
確かに一見浅いようでも、深層心理を深く考えていくとより深い気もしてくる動機だと思います。
物語を読んでいる最中は、手記に書かれた殺された日高の言動や行動を知るたびに、腹が立ってきます。
恨まれて殺されてしまってもおかしくはないだろうと納得してしまうほどの人道的は酷さだったりするのですが、
そこが東野圭吾さんの企みでもあったことに気づいた時は、素直にやられた感満載でした。
後半のちょっとすぎたあたりから、頭が混乱してきて、胸がザワザワしてくるのを感じました。
あれ、何かが違う。おかしいと。
そうやって、思いながらも読み進めていく感じなっていました。
作中に、加賀刑事の考察の中に、
手記はじつに整然と書かれている。そして整然と書かれたものは、説得力を持ちがちである。読み進むうちに、その内容が必ずしも真実とはかぎらないのだということを忘れそうになる。しかし、そこにこそ、野々口修の狙いが潜んでいるとは考えられないだろうか。
という部分があります。
書いてある手記自体が本当かどうか怪しみながら読み進めていても、やっぱりひっかかってしまうし、混乱してきます。何が本当で、何が嘘なのか。
セリフの部分だけではなく、全体(行動の描写なども)を疑ってかからなければならないというところが、また、より複雑にしている感じです。
そんな手記と交互に、出てくる加賀刑事の推理力があいかわらずキレキレですごいです。
考察を読んでいると、まるで自分が賢くなった気分になるのは面白いですね。(笑)
タバコの吸殻の本数一つから推理を組み立てていくところは、さすがの一言でした。
野々口が加賀刑事の教師時代の同僚だったことから、教師時代の加賀刑事このとを知ることができるのは、ファンとしては嬉しいところなのではないでしょうか。
今のバリバリ仕事をしている加賀刑事からはちょっと想像つかない過去の話があったりと、ちょっと面白かったです。
明確な動機がなければ、人は行動しない。
ましてや犯罪など犯したりしない。
そして、その動機は周りの誰もが聞いても納得できるものである。
そういった思い込みが吹き飛ばされて、今一度、考えさせられました。
本人でもはっきりと深くは認識していないものが動機であったりする場合もあるのではないかと。
最後に
不思議な新しい体験をさせてくれた、本当に秀逸な作品だと思います。
この作品の大きな構造(犯人手記と刑事の記録)で、うまくミスリードされるように展開されていくのがとても興味深く、すごい発想だなと感じました。
犯人が最初にわかるパターンの作品はたくさん読んだり見たりはしてきました(その場合は大抵「どうやって」の部分の謎を追う)が、「なぜ?」という謎をメインとして作られている作品は、珍しく、それもまた貴重な体験となりました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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