東野圭吾作品の中でも人気が高い一冊です。
驚くようなトリックがあったり、痛快に事件を解決してくようなミステリーではなく、
「犯罪者の家族の人生」をテーマに重くずっしりと、とても考えさせられる作品となっています。
被害者側に焦点をあてた作品は色々とありますが、加害者側に焦点を当てた作品は珍しいのではないでしょうか?
それでは、あらすじ&見どころ、個人的な感想をお伝えしていきたいと思います!(ネタバレなし)
・ヒューマンドラマが好きな人
・珍しいテーマ作品を読んでみたい人
・重いけども考えさせられるような作品を読みたい人
・東野圭吾作品の中で人気が高いものを読んでみたい人
Contents
あらすじ:犯罪者の弟というレッテルを貼られた人生
強盗殺人を犯して逮捕された兄・武島剛志。
その動機は弟・直貴を大学へ進学させるための費用の捻出だった。
「学歴がなかったせいで夫は早死にした」と亡き母は考えていたため、子供には絶対に大学進学できるように身を粉にして働いていた。
その母の意思を継ぐように剛は、弟のために必死で体をはって働いていた。
自分は頭が悪いから、弟・直貴がいくべきだと。
しかし、日々の重労働から、体を壊してしまい、働けなくなった自分に困っていた兄・剛は、ふと引越しの仕事で過去に訪れたことのあるお婆さんの家を思い出す。
優しい人で、裕福な家だったからだ。
何としかして弟の為にお金を用意しなければ、と追い込まれた剛は、お婆さんの家に盗みに入ってしまう。
しかし、犯行を目撃されてしまい、警察に通報されるのを恐れた剛志は、衝動的にお婆さんを殺害してしまう。
突然の警察の呼び出しに、直貴は寝耳に水で何が何だかわからず困惑する。
しかし、時間がすすみ現実を知るにつれて、自分は「強盗殺人犯の弟」になったのだと実感していくことになる。
直貴は、最初は大学へ行くことは諦め、働きに出ていた。
しかしそこで出会った同僚に、
「普通の連中に比べりゃとんでもなくきつい道かもしれないけど、道がなくなっちまったわけではないと思うけどな」
と言われ、さらに大学進学へのきっかけを残してくれた彼の気持ちに後押しされて、なんとか通信制の大学へ進学を果たすのだった。
素敵な歌声を才能として持っていた彼は、それを見出した寺尾に誘われてバンド活動を始めることになる。
寺尾の想像通り、直貴の歌声はたくさんの人たちを魅了していくのだった。
そしてついにスカウトの目にとまり、いざデビューというところで、「強盗殺人犯の弟」というレッテルにより、断念させられることになってしまう。
直貴は仲間の夢を壊さないためにも自ら身をひくのだった。
世の中と距離を置いて生きていた直貴は、しばらくして、自然と好意を抱く女性に出会う。
しかし、相手は裕福な育ちのご令嬢。
ここでも、「強盗殺人犯の弟」というレッテルに邪魔をされてしまう。
自分は所詮、殺人犯の弟。
幸せになんかなれるはずもない、と追い込まれた直貴は自ら彼女との別れを選んでしまう。
そして、彼女の幸せを願って去っていってしまうのだった。
大学を卒業して、なんとか就職先も決まる直貴。
しかし、その後の人生も「強盗殺人犯の弟」というレッテルに取り憑かれ、不幸のループは繰り返されていく。
直貴が幸せを夢見るたびに不幸への道へと進まされてしまう。
繰り返されるこの苦しみに耐えて、翻弄されながらすすんでいく直貴は、最後には一体どのような覚悟と生き方を選ぶことにしたのだろうか?
感想
強盗殺人犯の弟というレッテル
兄が強盗殺人を犯してしまったがために、「強盗犯罪者の弟」というレッテルを貼られ、ことあるごとに
不幸に叩き落とされる。
その繰り返しが読んでいてとてもつらく、虚しい気持ちになりました。
やがて、自分はどうせ幸せになれないと諦めて、自ら不幸への道へと進んでいくところは胸が痛くて、読むのがつらかったです。(それほど描写力がすごいということにもなるのですが)
弟の兄への想い(葛藤)を巧みに描いた心理描写
不幸の壁に打ち当たるたびに、兄への憎しみが湧いてくる弟。
しかし、そんな想いを抱きつつも、やはり兄を愛している自分の心が苦しみを生んでしまいます。
何かあるたびにその間で揺れ動く弟の気持ちをとてもリアルに描かれているので、スラスラとは読めない、惹きつけられる力強さがある作品だなと思いました。
兄の弟へ対する愛と優しさ
自分で自分のことを馬鹿だからと言ってしまう兄。
そんな自分でも愛する弟のためには自らの犠牲もいとわないと本気で思っている兄。
しかし、それが必ずしもいい方向にはいかず(空回りしてしまっているようにみえる)、結果的に最愛の弟を苦しめてしまうことに。
獄中から定期的に手紙を書く兄だが、それがまた無自覚に弟を苦しめてしまう。両者の視点で気持ちが分かるからこそ、読んでいて心の底を鷲掴みされて揺さぶられる感覚を感じました。
犯罪者家族はどう生きればいいのか?
作品を通して、ずっと考えさせられたのが、「被害者家族になったらどうすればいいのか?周りにそんな人がいたら自分はどう接するだろうか?」ということでした。
もちろん正解はなく、そして難しいテーマなのですが、読後もしばらくは体から離れずに、深い余韻に浸っていました。
最後に
テーマが重たいがゆえに、ダークな気分にはなりますが、読み応えは抜群です!
僕の中ではおすすめの「泣ける感動作品」ですね。
有意義な時間を過ごせてよかったと素直に思えました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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