医療ミステリー作品です。
ドラマ化、映画化もされていて、人気の高い作品。
強盗に居合わせてしまった主人公が、銃でうたれてしまい、脳に大怪我をおってしまいます。
奇跡的に適合したドナーが見つかり、脳移植をして命をとりとめるのですが、そこからの主人公の変身ぶりはとても怖いです。
でもその後の展開が気になって気になってしょうがない。
そんな作品です。
それでは、『変身』(東野圭吾)のあらすじと感想をご紹介したいと思います!
(少しだけネタバレあり)
あらすじ
主人公・成瀬純一は、不動産屋で偶然、強盗に遭遇。
犯人の発砲から少女を助けるため、とっさに身代わりとなって銃で頭を打たれてしまうのだった。
気付くと純一は病院らしきところのベッドの上にいた。
彼は、銃で撃たれて欠損した脳の一部を、おどろくべきことに他人の脳を移植することで命をとりとめたのだった。
この大手術は、世界の注目の的となる。
純一には、画材屋さんで知り合った彼女がいた。
もともと内向きだった性格は、術後には非常に前向きになり、やりたいこともたくさんあり、前よりも精力的にキラキラと輝いているようだった。
しかし、徐々に自分の性格の異変に気付く。
短期ですぐにカッとなる性格に変わっていっている自分に、不信感を抱き始める。
そんな時に、酒の席で喧嘩した客を殺そうとしたり、とあることがきっかけで、隣人までをも殺そうとしてしまった純一は、ドナー情報をこっそり調べて、ドナー家族の元へ会いに行く。
そこから聞かされる話は、あまりにも自分が体験している人間性とは正反対だった。
一連の出来事や、自分が感じている変化を手術をした教授チームに話すものの、「そんなことはよくある。なにせすごい体験をしたのだから。」とのらりくらり交わされてしまう。
何かがおかしい。
純一はそう思った。
あんなに、好きだった絵を描くこともできなくなってしまっていた。前は溢れるほどのイメージが湧いてスラスラと描けたものだ。
代わりに、ピアノの音に妙に意識が持っていかれてしまい、気づくとその音色に浸っている自分を発見する。
普通の人では分からないような音のズレさえ、今の純一にははっきりとわかるのだ。
ある日、銃を撃った犯人がピアノの才能があったことを知り、恐ろしい仮説が頭をよぎる。
いてもたってもいられなくなった純一は、犯人の双子の妹を尋ねてしまう。
そして、間違いなくこの妹は僕の脳の中にいる人物と家族であることを、不思議な体験を通して確信する。
最初はとぼけていた教授も、ついに告白。
力を持った国の人たちが、自分の若返りのために脳移植のプロジェクトを早く成功させるように圧力をかけて、進めさせていたのだ。
純一が病院に運ばれた時に、奇跡とも悪夢とも言うべきか、おそるべき確率で犯人の脳と純一の脳は適合性をクリアし、移植できるかもしれないという状況だったのだ。
日に日に、殺人犯の脳に侵食されていく純一。
あんなに、愛していた彼女に対して、全くときめくこともない。
このままでは、本当にいつかは殺人を犯してしまいそうだ。
自分が他人に支配されていく恐怖に震えながらも、決死の覚悟で闘っていく純一。
頭の中にいる殺人犯から愛する彼女を救うべく、純一が決断した覚悟とその行動とは?
「脳の移植」をテーマに展開される物語は、僕たちに何が正解なのかを、深く問いかけてくる作品となっている。
感想と見どころ
読後感は、最後が幸せな描写で描かれて、爽やかな雰囲気だったから気持ちよく読み終えました。
だた、よくよく考えたら、壮大な力に翻弄された被害者の悲しいお話でもあるなぁと。
自分に移植された脳が、知らされていた脳と違うのでは?という展開になった時の、不意打ち感はすごかったです。
生き残れたとはいえ、頭の中に殺人犯の脳が入っているというのは、想像しただけで気持ち悪くなる。
しかも自分でも気付くくらいに目に見えて、冷酷になっていく感情や、行動に、このまま進行していったらどうなっちゃうのかと、想像に耐えがたい心境でした。
自分が自分でなく、最終的に別の人になってしまうなんて、自分はまだしも、周りの恋人や友人をどう巻き込んでしまうのか想像するのが恐ろしい。
(ふと、『アルジャーノンに花束を』を思い出しました)
主人公が懸命に脳の中のジュンを消されないように奮闘する姿は、とても胸に響きました。
あの時銃で撃たれて、そのまま死んでいた方がよかったのかもしれない、とかものすごい葛藤したんだろうなと。
黒幕である国がただ自分の利益のために、主人公に耐えがたい苦痛を与えたと思うと、最後にはやっぱりその人たちがやり込められる場面は見たかったかな。
後半は、残された時間でいかに愛する恋人を守るかという、ミステリーとはまた違った楽しい作品でした。
「生きているというのは、単に呼吸をしているとか、心臓が動いているとかってことじゃない。脳波が出ているってことでもない。それは足跡を残すってことなんだ。後ろにある足跡を見て、たしかに自分がつけたものだとわかるのが、生きているということなんだ。だけど、今の俺は、かつて自分が残してきたはずの足跡を見ても、それが自分のものだとはどうしても思えない。20年以上生きてきたはずの成瀬純一は、もうどこにもいないんだ。」 本文より
このセリフの部分を読んだときは、生きるとは何かを本を読むのをとめて、しばらく考えてしまいました。
恐怖に怯えながら長生きするのはちょっと違う。苦しいだけ。
そうなるとやっぱり多少の希望が未来に描けないと、本当につらい毎日=人生になってしまいます。
他の臓器移植だったらここまで、発展して考えられなかったかもしれないですね。
脳は人間の大本ですから。
脳が入れ替わったらそれは元の人間と言えるだろうか?
(ちょっと『テセウスの船』を思い出しました)
構成としては、日記という形で、他の登場人物の思いや考えが、要所要所で知ることができたので、より作品に立体感があって面白かったです。
才能が「絵を描くこと」から「ピアノの音を聞き分けること」へ段々と変化していくところは、脳の中で侵食がどんどん進んでいっていることがよくわかる美味い表現だなと感じました。
最後に
自分の身に怒ったら、自分はどういう結末を選ぶだろうか。
作品テーマがリアルなだけに、とても真剣に想像してしまいました。
東野圭吾さんの作品の中でも人気がある作品だったので、読みたいと思っていましたが、やっぱり読んで良かったと納得です。
ドラマ化や映画化もされているので、今度は映像だとどう感じるか?原作との違いはどんなところなのか?も合わせて見てみたいと思います!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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