東野圭吾作品で有名なキャラクター・加賀恭一郎シリーズです。
ストーリーは、最初に犯人がわかり、加賀刑事が犯人を追い詰めていく形式の作品となっています。
追い詰められる犯人と真実を知ろうとする刑事の視点が交互に描かれていく展開は、とてもスリリングです。
ラスト数ページでの驚きの展開には、少しの間、読む手が思わずとまりました。
複雑な人間関係と、良いも悪いもふくめた多くの「人間らしさ」がうまく描写されており、それがまたどっぷり作品の世界に引き込ませてくれます。
それでは、『赤い指』(東野圭吾)のあらすじと感想を、見どころも交えながらご紹介したいと思います!
(ネタバレなし)
あらすじ
7歳の少女の遺体が住宅街にある公園のトイレで発見された。
その前日・・。
夫・前原昭夫は妻・八重子から「すぐに帰ってきてほしい」と電話をもらう。
ひどく動揺していて、何が起きたのかもうまく離せない状態の八重子。
昭夫は仕事を切り上げ、帰宅をした。
するとそこには少女の遺体が横たわっていた。
八重子に事情を聞くと、息子がどうやら殺したらしいということだった。
息子は引きこもりがちで、感情のコントロールがうまくいかず、全ては周りのせいだと、いつも荒れていた。
今回も、自分が少女を殺した現実から逃げ込んで、部屋に閉じこもっていた。
昭夫は警察に連絡しようとするが、八重子がそれをとめる。
息子の未来はどうなるの?と問いかける八重子。
夫婦で散々話しあった結果、やむをえず、少女の遺体を隠蔽をして、息子をかばうことにしてしまう。
こうして、家族で協力して警察から逃げ切る計画がスタートした。
周りが静まった深夜に、昭夫は遺体を入れた段ボールを自転車にのせて、遺体を遺棄する場所として選んだ公園のトイレへ向かう。
証拠が残らないように、一つ一つ気づいたところを消そうとするも、次々とやってくる難題に奮闘してあせる昭夫。
とにかくやり抜くしかない、押し通すしかないとひたすらに遂行するのだった。
そして、翌日の朝に、たまたま通りかかった近隣住民によって少女の遺体は発見される。
捜査にあたることになったのは、加賀恭一郎刑事。
(突出した、洞察力、推理力に加えて、人情味溢れる人柄で、東野圭吾作品でシリーズ化されている。)
加賀刑事は、パートナーとともに近隣への聞き込みを始めると、その鋭い洞察力で早々に前原家が怪しいと勘付いてしまう。
前原家は昭夫、八重子、息子、昭夫の母・政恵の四人で住んでいた。
政恵は痴呆が進行、息子は引きこもりがちで人とのコミュニケーションがとりづらいといったように、複雑な家庭環境だった。
捜査が進み、警察がたびたび訪れる状況に気が気でない昭夫。
ついには、このまま隠し通すことはできない!と追い詰められた昭夫は、ある恐ろしい計画を思いついてしまうのだった・・・。
感想と見どころ
ラストで明かされる一家の秘密に、胸が締め付けられる思いでした。
家族を思う愛情に感動しました。
簡単にいうと引きこもりの息子が、少女を殺してしまい、両親があわてふためき、必死に事件をかくそうとする物語設定なんですが、それを盛り上げる、父親の感情描写や家族の行動が面白くて、まずグッと物語にひきつけられました。
家族のやりとりがとても生々しくリアルすぎて、本当にこんな家族あるなと思ってしまうのです。
そして、その時にはもうすでに物語の世界にストンと入り込んでいました。
息子の行動もさることながら、父親の考えることや行動も、とても人間臭くて、つい突っ込みたくなります。
例えば、昭夫はやることなすこと問題を先延ばしにしてきた自分にいつも後悔しています。
しかしながら、そんな昭夫が目の前の問題から逃げ出して、放り出している息子に対してイライラしていたりするのです。
そして、いつものように冴え渡る加賀恭一郎が着実に事件を解決していく様子は、読んでいて納得と感嘆の連続でした。
本当に加賀刑事の洞察力恐るべし。
やがて事件を隠そうとしている家族も、加賀刑事のプレッシャーに耐えきれなくなる場面などは、相手が相手だからしょうがないよ、とすら思えてきました(笑)。
この物語はこの後に、さらに注目すべき点が2つあります。
それが、加賀刑事の
「刑事というものは、真相を解明すればいいというものではない。いつ解明するか、どのようにして解明するか、ということも大切なんだ。」
という言葉からわかるとおり、人情味溢れる彼らしい独自の事件解決へのアプローチ。
そして、事件が解決されることによって、新たに解明された家族における真実です。
追い詰められた昭夫が考えた、痴呆の母親を犯人にしたてあげて警察に引きたわすという計画には、やりきれない気持ちになりました。
そういう一連の出来事があるからこそ、ラストの家族の隠された真実は、胸にこみ上げてくるものがありました。
つまり、
①まずは事件をどうやって解決していくかという面白さ。
②その真実をもとに関係者にとってどうやったら良い幕引きとなるかを加賀刑事はどうやって対応していくのかというところに湧いてくる興味心。
③もっと奥にそこに隠れていた驚愕の家族の真実
という三段階の面白さが後半から一気に展開されていくのです。
それは、もう読むのをやめることはできません(笑)。
この構成&展開に見事にやられました。
最後に
加賀恭一郎シリーズの中でも、かなりお気に入りの作品です。
いつもそうなんですが、読み終えた後にタイトルの意味がしっかりと分かる瞬間はとても楽しいですよね。
今回の「赤い指」の意味も、見事な伏線だったなと納得でした。
ぜひ、ゆっくりと読み進めながら、同時にラストを想像していってみてください。
きっと、驚くと思いますよ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
こちらも同じく加賀恭一郎シリーズです。
https://n-atonin.com/m-book/inori-no-maku/
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