ミステリー本

危険なビーナス(東野圭吾)のネタバレ解説!あらすじや感想も!

東野圭吾さんの『危険なビーナス』について、あらすじとともにネタバレ解説をしていきたいと思います。

ドラマ化されて、とても話題になっていますね。

ドラマに関しては、原作と結構違いがあるようですが、

今回は原作を読んだ上でのネタバレ解説をしたいと思います。

原作をまだ未読な方は、ご注意くださいませ。

 

主要な登場人物

◆手島伯朗
池田動物病院の院長代理として勤務する獣医

◆矢神楓
伯朗の弟・明人の妻だと名乗り、ある日突然、伯朗の前に現れる謎の女。

◆手島禎子(伯朗の母)
伯朗と明人の母で、16年前に事故死した。
伯朗の実の父である一清と死別した後、矢神家の御曹司・康晴と再婚し、明人を産んだ。

◆手島一清(伯朗の父)
伯朗が幼い頃に病死した実の父親。画家。

◆矢神明人(伯朗の弟)
伯朗の異父兄弟で、楓の夫。
矢神家の現当主の血を引く唯一の存在で、30億ともいわれる遺産の相続権を持つ。

◆矢神康治(禎子の夫で伯朗の義理の父)
矢神家の現当主。禎子の再婚相手で、伯朗にの義理の父親。
末期癌で余命わずか。

◆兼岩順子(伯朗の叔母)
伯朗の母・禎子の妹。
伯朗を幼い頃から実の子供の様にかわいがっている。

◆兼岩憲三(伯朗の叔父)
禎子の妹・順子の妻。
数学者。

◆矢神康之助
矢神家の前当主。
医学会に医師として輝かしい功績を残し、巨万の富を築いてきた。
「すべての遺産を明人に譲る」という遺言状を残して16年前に死去した。

◆矢神勇磨
矢神家の養子で若手実業家。
伯朗を昔から見下している。

 

あらすじ(ネタバレ解説)

物語の始まり

ある日突然、手島伯朗の元に矢神楓が訪ねてきます。

話をきくと、どうやら弟・明人の妻らしい。

元CAの楓は、明人とはマンハッタンで出会い、そのまま交際、結婚にいたったのことでした。

そして、今回伯朗の元を訪ねた理由は、「明人が書き置きを残して行方不明になった」ということだったのです。

彼女は明人は矢神家の誰かに誘拐されたのではないか?と考えています。

なぜなら、明人は矢神家の莫大な遺産を1人で相続することになっていたからです。

それを阻止しようと矢神家の関係者が明人を誘拐したのではないかと疑い、犯人を探し始めます。

まずは伯朗と一緒に、矢神家の相続会議に出席しました。

そして、伯朗は前当主の矢神康之助が亡くなった時に、次の様な対応をしたことを知ります。
(楓は明人から聞いてだいたいは知っていました。)

矢神康之助は「すべての遺産を明人に譲る」と遺言を残していましたが、

・子供たちには等しく相続権があるべきだという考えから遺留分を分配する。

・当時、小学生の明人に全財産相続するのは非常識だとの考えから、屋敷などは将来明人に譲る前提で名義はそのままに、現金は一時的に父親の康治が預かる。

という形で相続をしていました。

つまり現当主の康治が亡くなり、相続人である明人が失踪すれば、莫大な遺産は残された矢神家の人たちに再び相続できる可能性が出てくるのです。

すべての人が怪しく思える中、犯人探しに突き進んでいきます。

 

小泉の家と隠された一枚の絵

伯朗は、犯人を追っている途中に伯朗の母の実家である「小泉の家」がまだ存在していたことに驚きます。

義父・矢神康治に家は取り壊して更地にしたと知らされていたからです。
(写真も見せられている。)

では、なぜ康治は隠したのでしょうか?

それは、一枚の絵の存在を隠すためでした。

伯朗の実父の一清は、サヴァン症候群で、その天才的な脳から描き出された最後の絵は、
数学界にとっては、とてつもない価値のある絵だったのです。

【サヴァン症候群とは?】

知的障害や自閉症などの発達障害等のある人が、その障害とは対照的に、芸術や計算能力などの分野で偉才を示すこと。

そして、なぜ一清がそんな絵を描けたのかというと、

脳に問題を抱えていた一清は、医師であった矢神康治から脳の治療を受けた結果、サヴァン症候群になったからなのです。

つまりは脳の病気を治すために、脳に電流を流すという、正規でない施術を人体実験のようにおこなったのでした。

伯朗は母の死が本当に事故死だったのか、疑いを持っていましたが、

それも誘拐犯の供述により殺されてしまったということを知ります。

その犯人とは伯朗の叔父である兼岩憲三でした。

 

犯人の動機と結末

矢神家の相続品の中には、伯朗の父が残したその絵『寛恕の綱』がありました。
(素数の規則性を解明する図である「ウラムの螺旋」が隠されていた。)

この絵には数学者である憲三が生涯をかけて研究し続けていた数学界の永遠の謎「リーマン予想」を解に導くヒントが隠されていたのです。

憲三は絵の存在を知り、何としても手に入れるために、家を探索していたところ、禎子に見つかり、衝動的に殺してしまったのです。

そして、矢神家の相続で明人にその絵が渡らないように、ほとぼりがおさまるまで拉致しようと考えたのでした。

そのため、叔父は明人誘拐の実行犯ををインターネットで募集しました。

そして、その募集に気づいた警察は書き込んだ犯人をつきとめるために、ターゲットとなっていた明人に接触をはかり、事情を説明して、協力をあおいだのです。

矢神家のもの達が怪しいと睨んだ警察は潜入捜査を試みます

その潜入捜査官として任務を受けたのが「矢神楓」だったのです。

しかし、結局は警察が目をつけていた矢神家の人たちは関係なく、手島禎子(伯朗の母)殺害と明人の誘拐計画犯として叔父が逮捕されるのでした。

 

感想

物語のメインとして登場する「矢神家」自体が読者に対する「巨大なトリック」だったのだということに驚愕でした。

矢神家の誰かが遺産を相続するために明人を誘拐したと思って読んでいましたが、まさか今回の事件の動機からすでにズレていたことに、やられた感たっぷりでした。

他作品では「密室トリック」をメインに置いてあるようにみせかけて、それ自体が読者をミスリードするトリックとなっているような作品もあります。

今回も、まさに東野圭吾さんらしい切り口の作品だなと感じました。

だからこそ、楓の正体を知った時は目が点になりました。

常に犯人側の人間だと疑いの目を向けていた人物が、全く逆の犯人を捕まえるための正義の「警察官」だったのですから。

実に見事な構成で展開される作品だと思いました。

 


最後までお読みいただき、ありがとうございました。