ミステリー本

祈りの幕が下りる時(東野圭吾)のネタバレ感想!あらすじつきでご紹介!

東野圭吾さんの「祈りの幕が下りる時」のネタバレ感想を原作をもとにあらすじつきでご紹介します。

東野圭吾さんの作品の中でも人気の高い「加賀恭一郎シリーズ」の最終章となります。

ガリレオシリーズとは違って、より人間関係と人情に重きをおいたこのシリーズも、区切りがつく形となりました。

加賀恭一郎の家族との関係は謎に包まれていましたが、この作品によって明らかにされています。

ネタバレを含みますので、まだ未読の方はご注意くださいませ。

 

あらすじ 前編

母親の死

日本橋署の刑事・加賀恭一郎はある日、仙台に住む宮本という女性から思いもよらぬ連絡をもらいます。

お店で働いてくれていた田島百合子という女性がいたのですが、その女性は加賀の母親ではないだろうか?という話でした。

百合子はかつて旅で訪れたことがあるという仙台で、宮本の経営するスナックで働き始めました。

宮本は百合子の過去を多く知らず、決して明るい感じではないが、接客を通した長年の勘から百合子の魅力を見抜いていました。

そして百合子は予想通り、スナックの看板女性となります。

やがて綿部という男性客とも恋人同士にもなっていたようでした。

仙台に駆けつけた加賀は百合子が間違いなく自分の母親であることを確認し、遺品を全て引き取り、失踪してからの母親の人生と心境、そして家族に対してどう思っていたのかを調べ始めます

 

16年後の東京

葛飾区の荒川沿いのアパートで、死後3週間ほど経過した腐乱した女性の死体が発見されました。

鑑定の結果、死体は、滋賀県の老人ホームで働く押谷道子のものであることが判明します。

明治座へ旧友の演出家・浅居博美を訪ねて上京後、何者かに連れ去られて殺害されたと思われました。

遺体の発見場所に住んでいた越川睦夫という男が行方不明になっていることから、警察は越川を犯人として捜査を開始します。

 

一方、本事件と同時期に荒川河川敷で起こったホームレス放火事件

捜査一課の松宮は、殺害された現場の雰囲気や距離が近いことから、見つかった焼死体が越川ではないかと疑い始めます。

しかし、その部屋にあった歯ブラシやカミソリなどから採取されたDNAをもとに鑑定を行ったが一致しませんでした。

 

日本橋署刑事であり、松宮の従兄である加賀恭一郎に相談をします。

すると、加賀は指摘します。

意図的にすり換えられた可能性があるのではないかと。

あらためて、違うものでDNA鑑定を行った結果、それが見事に一致して、越川睦夫と焼死体として発見されたホームレスが同一人物であることが分かりました。

 

一方、加賀は現在明治座で公演を行なっている「異聞・曽根崎心中」の演出家・浅居博美に会いに行きます。

彼女とは以前に仕事したことがあり、面識がありました。

松宮から相談を受けた際にお店に貼ってあった公演のポスターを見たのがきっかけでした。

 

そして非番の時に、日本橋の常盤橋で捜査中だった松宮から、越川がアパートに残した遺留品の月めくりカレンダーのそれぞれの月に、何かの暗号のように「常盤橋」「日本橋」「江戸橋」など日本橋川・神田川にかかる12の橋が書かれていたことを聞いた加賀は、激しく動揺します。

なんとそれは、16年前に加賀が仙台で亡くなった母・田島百合子の部屋に残されていたメモ書きと一致していたからです。

そのメモの持ち主は、当時母が付き合っていた原発作業員・綿部俊一が書き残した筆跡と一致しました。

 

捜査本部に合流した加賀は、やがて、捜査が進展するにつれ、事件が加賀の母親との過去に関わる秘密に大きく関係していることに気づいていきます。

 

あらすじ 後編(ネタバレあり)

借金取りから身を隠すために夜逃げをした浅居忠雄と博美親子は行き着いた先で原発で働く横山一俊という人物と知り合いました。

どう考えても手持ちのお金が少ないであろうにもかかわらず高級旅館に宿をとった忠雄を見て、父親が自殺することを考えていると感じた博美は不安でいっぱいになります。

そんなとき忠雄の目を盗んで、横山がお小遣い稼ぎと称して博美の体を求めてきます。

一度はお金のためと覚悟を決めた博美ですが、やはり受け入れることはできずに、意図せず反射的に横山を刺し殺してしまいます

そして、博美から連絡を受けて、現場の状況を知った忠雄は、咄嗟にある計画を思いつきます。

それは忠雄がこれからの人生を横山一俊として原発の仕事に関わりながら生きていくこと。

そして、横山の遺体をつかって浅居忠雄は崖から飛び降り自殺したことにするということでした。

 

父親が死んだことになった博美は、地元に戻り施設を経て女優になることを夢見て上京します。

そして地元の担任の先生だった苗村も、不倫関係であった浅居博美のために、妻と離婚して上京してきていました。

原発の仕事をしながら全国を転々としながら時々、連絡をとってこっそりと会う生活を続けた忠雄と博美

滅多に会うこともできず、周りに2人の関係がバレないように必死で隠す生活でした。

父・忠雄の口から博美は、綿部という人物として会っている加賀の母・百合子の存在も知らされていました。

このことが後に博美が加賀に会いにいく理由にもなったのです。

 

ところがある時、この親子の密会が当時博美が付き合っていた苗村に知られてしまいます。

忠雄は自身の生存を知る人物が存在することを避けるために苗村を殺害します。

舞台女優としてその世界では少しづつ名前が知られてきていた博美は、忠雄の提案で密会方法を変えることにしました。

それが月ごとに日本橋周辺の橋で会うということでした。

これがカレンダーのメモの真相でした。

 

2人は密会に最新の注意を払うようになっていましたが、2人の緊張が緩む瞬間が訪れました。

念願の博美演出の明治座公演「異聞・曽根崎心中」でした。

明治座公演初日に駆けつけた忠雄は、夢をかなえた娘の晴れ姿に感激します。

しかし、そこで出会ってしまったのが、小菅のアパートで死体となって発見された博美のかつての同級生、押谷道子でした。

姿を見られた忠雄は越川睦夫として暮らしていたアパートに道子を連れ、そこで道子を殺害します

夢の叶った娘を見ることができ、逃亡生活にも疲れ果てた忠雄は、自ら焼身自殺を図ろうとします。

選んだ死に場所はホームレスから買い取った新川河川敷のテントでした。

博美は止めに入るも、忠雄の覚悟を知り、父親の望みをこの手で叶えてあげようと、悲しみながら忠雄を殺害するのでした

忠雄が焼身自殺への恐怖を語っていたことを覚えていた博美は、そっと首を絞めて忠雄を殺害し、テントごと燃やし、その場を立ち去るのでした。

(時間差で燃えるように、細工をしたろうそくを使って)

皮肉にもその状況は、公演中の「異聞・曽根崎心中」のラストと重なるのでした。

 

明治座公演千秋楽を迎えたその日、加賀は博美のもとに向かいます。

加賀は母親の遺品から見つかったメモの真相を知るために異動を断り日本橋署で働き続けましたが、母親失踪の真相と、母が家族に対して抱いていた気持ちがわかったところで、日本橋署を離れ警視庁捜査一課へ移動となりました。

 

感想

加賀恭一郎シリーズの完結編ということだったので、前のシリーズを読んでから読んで良かったと思いました。

なぜなら、確実に登場人物への感情移入度が変わっていたと思うからです。

加賀の背景、父の背景、そして母の背景周。

ある程度わかった上で、この作品を読むと、物語の深さがより増すのではないかと感じました。

登場人物が複雑で(さらにトリックも関係しているので)、それぞれの人物を確認するときもありましたが、全体通して混乱するというようなことはありませんでした。

事件の謎(犯人や動機など)と加賀恭一郎自身の謎という両方が同時進行で展開されるので、かなり心惹きつけられました。

しかも、その2つが段々と近づいてきて合わさりそうになる時のハラハラドキドキはたまらないです。

犯人親子の生き様が壮絶で切なすぎるんだけれども、2人の関係や行動に感動するとともに、互いの深い愛情に触れることができ、胸が締め付けられました。

そして、加賀家のそれぞれの家族の愛し方にも感動しました。

事件の真相に関しては驚き、人間関係のリアルな描写は世界に引き込まれます。

読み応えたっぷりの作品だと思いますし、読んだ後も十分に余韻にひたれる作品だと思いました。

最終章にふさわしい、とても中身が分厚い、濃厚なヒューマンドラマだと思います。

題名通り、逃亡生活に幕を閉じた浅居親子、母親の気持ちと真実を追い求めたいた生活にも幕をとじた加賀恭一郎でした。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。